競走馬の体の部位は? 首・肩・背中・トモ・脚・蹄を図解

この記事で分かること
- 首、肩、背中、腰、トモが横から見てどこにあるか分かります。
- 前肢と後肢の「膝」、飛節、球節、管、繋、蹄を区別できます。
- 部位名を使ってパドックの印象を記録し、一か所だけで能力や健康を断定しない見方が身につきます。
競馬の記事を読むと、「トモに厚みがある」「飛節をよく使う」「繋が立って見える」といった言葉が出てきます。名前が分からないままでは、説明の場所を取り違えます。まず必要なのは、良い馬体を当てる技術ではなく、どの言葉が体のどこを指すのかを同じ地図で共有することです。
この記事は外から見える大まかな位置と、動くときの役割を学ぶ入門です。骨格診断、疾病診断、獣医学的な適否判定は扱いません。写真一枚には姿勢、毛、光、撮影角度の影響があり、パドックの短時間観察にも死角があります。「名前が分かった」と「状態が診断できる」は別だと最初に区切りましょう。
外観の区域と脚の関節を、一枚の地図で覚える

頭と胴をつなぐ範囲が首、前肢の上で胴との境にある肩甲骨周辺が肩、き甲の後ろから腰の前までが背中、背中と骨盤周辺をつなぐ短い範囲が腰です。トモは厳密な一個の骨名ではなく、競馬で腰から臀部、股、上部の後肢を含む後躯を広く指す言葉です。
図は位置を学ぶために単純化した模式図です。輪郭、関節角度、骨の本数、筋肉の形を解剖図どおりに再現したものではありません。首やトモの見た目一要素から距離適性、能力、故障の有無を断定しません。
胴体の部位を前から順に覚える
首とき甲
首は頭の重さを支えるだけでなく、走行時の姿勢や全身の動きにも関わります。首の付け根の上側で、肩甲骨の間から高く見える部分がき甲です。馬の体高は一般にき甲の最も高いところを基準に測ります。「首差し」は首の付き方や形について用いられる競馬語ですが、長い・短い、太い・細いだけで適性を決める言葉ではありません。
肩と胸
肩は前肢の上端にある肩甲骨の周辺です。人の肩のように横へ張り出した一点ではなく、首の付け根から前肢上部へ斜めに広がる区域として捉えます。胸は左右の前肢の間から胴の前部にかけての範囲です。正面から見た幅と横から見た深さは別なので、「胸がある」という一言だけでは何を見たか曖昧です。記録するときは「正面から胸前が広く見えた」のように視点まで書きます。
背中・腰・腹
背中は鞍が置かれる付近を含む胴の上側、腰は背中の後ろと骨盤側をつなぐ付近です。日常語では背中と腰をまとめがちですが、競馬記事では分けて述べる場合があります。腹は胴の下側です。「腹袋がある」は腹部がゆったり見えるという慣用表現ですが、それだけで太い、持久力がある、仕上がっていないとは決められません。呼吸、姿勢、食事、毛の見え方でも輪郭は変わります。
トモ
トモは臀部だけを示す点ではありません。腰の後ろ、骨盤周辺、臀部、股、後肢上部までを一まとまりに見る競馬の実用語です。「トモが張る」「トモを使う」と書かれていても、外観の筋肉量についてなのか、歩くときの後肢の運びについてなのかを文脈で分けます。トモの大きさだけで推進力を数値化できるわけではありません。
前肢と後肢では「大きく曲がる関節」が違う
| 見る順番 | 前肢 | 後肢 | 初心者の注意 |
|---|---|---|---|
| 胴に近い上部 | 肩甲骨周辺から上腕、肘 | 骨盤周辺から大腿、膝関節 | 骨の輪郭を外見だけで正確に描こうとしない |
| 上側の大きな関節 | 手根部。競馬では一般に「膝」と呼ぶ | 後方へ角ばる飛節。膝関節は腹に近い前方 | 後肢の飛節を人の膝と取り違えやすい |
| 細長い下部 | 管 | 管 | 管は「骨一本だけ」でなく外から見る区域名として覚える |
| 下の丸い関節 | 球節 | 球節 | 地面に近いが蹄ではない |
| 斜めの部分 | 繋 | 繋 | 角度は立ち方と撮影角度でも変わって見える |
| 地面に接する端 | 蹄 | 蹄 | 蹄鉄は体の一部ではなく装着する道具 |
この表は外から位置をたどる学習表です。完全架空の観察にも実馬の観察にも、一関節の形だけで「丈夫」「危険」「故障」と判定する使い方はできません。違和感の医学的評価は獣医師など専門家の検査領域です。
最初に覚えたい馬体用語
- き甲
- 首の付け根の後ろ、左右の肩甲骨の間で高く見える部分。体高を測る基準になる位置です。
- 肩
- 前肢上部と胴体をつなぐ肩甲骨周辺。人の肩のような一点ではなく広い区域です。
- 肩甲骨
- 肩の中心となる平たい骨です。馬では胴体の側面に沿って斜めに位置し、外から骨の輪郭すべてが見えるわけではありません。
- 背中
- き甲の後ろから腰の前までの胴体上面を指す大まかな呼び名です。
- 腰
- 背中の後ろと骨盤周辺をつなぐ範囲。外見から内部組織の状態は診断できません。
- トモ
- 腰、臀部、股、後肢上部を含む後躯の総称として使われる競馬語です。
- 後躯
- 骨盤、臀部、後肢上部など、体の後方をまとめて指す言葉です。トモと重なる範囲があります。
- 臀部
- 骨盤の後ろ側を覆う、尻に当たる区域です。外見上の丸みだけで筋力を数値化できません。
- 手根部
- 前肢の途中にある関節群で、競馬では一般に前脚の「膝」と呼ばれる位置です。
- 膝関節
- 後肢の前方、腹に近い位置にある関節です。後方へ角ばる飛節とは別です。
- 飛節
- 後肢の途中で後方へ角ばって見える大きな関節。英語のhockに当たります。
- 管
- 前肢の膝または後肢の飛節から球節へ続く細長い部分です。
- 球節
- 管の下、繋の上にある丸く見える関節部。前肢と後肢の両方にあります。
- 繋
- 球節と蹄の間にある斜めの区域。「つなぎ」と読みます。
- 蹄冠
- 繋の下端と蹄の上端が接する帯状の区域です。模式図の一本線より実馬では幅のある境目です。
- 蹄
- 肢端の角質だけでなく、その内側の軟組織、骨、腱、靱帯を含む部位名です。
- 蹄鉄
- 蹄を保護するため接地面側に装着する道具。蹄そのものとは別です。
- 歩様
- 前肢の出方、後肢の踏み込みなどを含めた歩き方の全体的な様子です。
- 可動域
- 関節や体の区域が動ける範囲です。動画の見た目だけで角度や正常・異常を確定しません。
- フレームレート
- 動画が一秒間に記録・表示する画像の枚数です。枚数や再生処理により、速い動きの見え方が変わります。
- 床反力
- 蹄が地面を押したとき、反対向きに地面から馬体へ返る力です。専用機器で測る量で、目視の印象とは区別します。
部位は単独で働かない
走る馬の体は、首、背中、トモ、四肢、蹄が別々の部品として動くわけではありません。頭頸部の位置が変われば胴体の姿勢や四肢の運びも変わり、蹄と地面の接触は肢の動きへつながります。査読された馬の頸部機能のレビューや、蹄鉄・路面と走行中の変位を調べた研究でも、部位間・路面との相互作用が検討されています。
ただし、研究室で複数のカメラ、センサー、床反力、画像診断などを用いて測る内容を、観客が一方向から数分見た印象へそのまま移すことはできません。パドックでできるのは「今日は左前肢の出が前回より小さく見えた」のような観察記録までです。「肩の角度が何度だから必勝」「蹄がこの形だから故障」という結論には飛びません。
架空馬ミドリノートを、部位名で記録する
初めて見た人が「後ろが良かった」とだけ書くと、翌月に何を比較したかったのか分かりません。完全架空の競走馬「ミドリノート」を、横から二周だけ観察したとします。記録は「トモの輪郭が前走映像より丸く見えた」「左右の後肢は同じくらい前へ出ているように見えた」「飛節から下は死角が多く判断を保留」と分けます。
次に正面から見られた範囲で「胸前の幅は広く見えるが、立ち位置が斜めなので比較不能」と追記します。これは評価点を増やすためではありません。見えた事実、以前との比較、見えなかった範囲を分離する練習です。この馬名、観察、過去映像はすべて架空で、実在馬の健康や能力を示しません。
パドックで体の部位を見る5手順
- 最初の一周は判定せず、頭がどちら向きかと前肢・後肢の区別を確認します。
- 首→肩→背中→腰→トモと上側の輪郭を前から後ろへたどります。
- 前肢は膝→管→球節→繋→蹄、後肢は飛節→管→球節→繋→蹄の順で見ます。
- 左右、今回と過去、止まっている時と歩いている時を分け、見えた事実だけ短く書きます。
- 部位一か所の印象を結論にせず、パドックの基本、調教、馬体重、レース条件と合わせます。
よくある誤解と観察の限界
「大きい筋肉=速い」ではない
筋肉の量、骨格、動きの協調、心肺機能、調教、馬場、距離、ペースなど、走りには複数の条件が関わります。トモが大きく見えるという観察を残すのはよい一方、それを着順へ直結させません。年齢や性別の違いを無視した横比較にも注意します。
「形が違う=異常」ではない
馬には個体差があり、立つ位置や荷重のかけ方も毎瞬変わります。左右が一度違って見えても、内側を歩いたか、引き手に顔を向けたか、遮蔽物があったかを確認します。公開映像はレンズ、圧縮、フレームレートの影響も受けます。
病名を付けない
腫れ、熱、痛み、可動域などは、画面越しや観客席から確定できません。歩様の乱れが病気で現れる場合はありますが、原因の特定には専門的な診察が必要です。SNSで実在馬へ病名や虐待などの断定を付けることは、正確性と関係者への配慮の両面で避けます。
研究エビデンスから分かること・分からないこと
JRAの競馬用語辞典は、蹄を外側の硬い角質だけでなく内部構造を含む名称として説明し、歩法を四肢の協調運動パターン、歩様を歩き方の全体的な感じとして区別しています。部位学習では、この公式用語を基準にしました。
頸部機能、背中の運動、蹄と路面の相互作用は査読研究の対象です。背中については、未騎乗馬が直径九メートルの円上を常歩・速歩・駈歩したときの首・背・骨盤の動きを計測したEgenvallほか(2023)の記述・比較研究があります。しかし乗り手のいない特定条件の研究で、競走速度やJRAの個別馬へ直接移せません。対象馬の種類、速度、路面、装蹄、測定方法が異なる研究を、一頭の次走予測へ転用することもできません。また「外から見た形だけで能力を順位付けできる」と示す資料ではありません。本記事の図は教育用の外観図であり、解剖アトラスや診断支援ではないという限界を保ちます。
競走馬の体の部位でよくある質問
トモは後ろ脚のことですか?
完全に同じではありません。競馬でいうトモは、腰から臀部、股、上部の後肢を含む後躯を広く指す言葉です。後肢はそこから蹄までの肢を指します。文中の「トモの張り」は外観、「トモを使う」は動きについて述べる場合があるので文脈も確認します。
馬の膝は前脚と後ろ脚のどこですか?
前肢で一般に膝と呼ばれる位置は手根部です。後肢の前方にある膝に相当する関節は膝関節で、横から見ると腹の近くにあります。後方へ角ばって見える大きな関節は飛節です。
球節と蹄の間は全部つなぎですか?
外から見える斜めの部分を繋と呼び、その下に蹄冠、蹄があります。球節は管の下にある関節部です。模式図では線で区切りますが、実馬では境目を点ではなく区域として覚えると見間違いを減らせます。
首が太い馬は短距離向きですか?
太さだけで距離適性は決まりません。年齢、性別、姿勢、筋肉量、毛、撮影角度などでも見え方が変わります。距離変更の見方、距離実績、血統、走り方など別の資料と合わせます。
パドックで脚の病気を見抜けますか?
観客の短い目視だけで病気を診断することはできません。左右差や歩きの変化に気づく入口にはなりますが、個体の平常時との比較と専門家の検査が必要です。不明なら評価を保留します。
蹄と蹄鉄は同じものですか?
違います。蹄は馬の体の一部で、蹄鉄は蹄の接地面側に装着する道具です。見える金属部分だけを蹄と呼ばないようにします。
写真だけでも馬体比較はできますか?
同じ向き、同じ距離、同じ姿勢に近い写真なら輪郭比較の助けになりますが、光とレンズで印象が変わります。体重の数値は馬体重増減の見方、動きは動画や当日の歩様へ分けて確認します。
まとめ
競走馬の体は、首、肩、背中、腰、トモ、前肢、後肢、蹄を前後の地図として覚えると記事を読みやすくなります。脚は上から関節を順にたどり、前肢の膝と後肢の飛節を混同しないことが第一歩です。そして部位名は観察を具体化する道具であって、能力や健康を一目で断定する札ではありません。
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ご利用にあたって
本記事は競馬の見方を学ぶための編集部独自コンテンツで、獣医療上の診断や馬体鑑定を行うものではありません。的中や利益を保証しません。馬券の購入は生活費を使わず、ご自身の判断と責任で無理のない範囲にとどめてください。20歳未満の方は勝馬投票券を購入・譲り受けることができません。